事例紹介
高周波焼入れの精度と専用コイル
製品仕様:弊社作成テストピース(大径部:φ35 小径部:φ25)
高周波焼入れにおきまして、コイルは品質を左右する重要な要素です。
弊社でお預かりする製品の中には既存のコイルでも対応が可能ですが、焼入れの精度としては、お客様の要望に沿うかどうか判断が難しいものがあります。そのような場合は、処理前にお客様とご相談後、専用コイルを作成させていただく場合があります。
その際に製品と一緒にテストピースもお預かりしている場合には、テストピースを焼入れし、マクロ組織(エッチングパターン)をご確認していただくことが可能ですが、ここではテストピースをお預かりしない場合の参考として、専用コイルと汎用コイルでのマクロ組織の違いをご紹介させていただきます。
指示硬化層イメージの赤部の焼入れ指示に対して、汎用コイルを使用する場合には、φ35部とφ25部の2か所に分けて焼入れを行うことになります。こうした場合には、どのようにしても焼の入りが甘くなるか、全く焼が入らない部分が発生してしまいます。
専用コイルを使用する場合は、φ25部・φ35部・φ35部の端面の全てを一度に焼入れできますので、焼入れ範囲の指示に近い硬化層を得ることができます。
弊社ではこのようなデータを考慮しまして、お客様とご相談の上、希望される焼入れの精度に基づいて処理を行っております。
指示硬化層
エッチングパターン
「高周波誘導加熱の特性を利用した処理」
製品仕様:弊社作成テストピース
高周波焼入れに使用する高周波誘導加熱装置を利用して、ろう付けをすることもできます。ろうを溶かし込む際の製品の加熱に、高周波誘導加熱装置を使用する形になります。高周波焼入れの特性がそのまま適応されますので、他のろう付け方法と比較して、短時間でろう付け部のみの加熱が行えるということになります。また、加熱の方法は高周波焼入れと同様でコイルに流れる電流による誘導加熱になりますので、高周波焼入れで培った弊社のノウハウがそのまま活かされます。
ろう付け画像
周波数の選択による硬化層深さの変化
製品仕様:φ30丸棒
高周波焼入れの特徴の一つとして、コイルへ流す電流の周波数を変更することにより、硬化層深さを任意に調整できるということが挙げられます。この特徴をわかりやすく目視で把握していただくために、φ30の丸棒に対して同じコイルを使用して、30kHz・50kHz・200kHzの三種類の周波数で、その他の条件をなるべく同一なものとして焼入れを行いました。丸棒の断面の外側に見える色が濃い部分が硬化層になります。周波数が低くなるにつれて、硬化層が深くなって行くのが確認できます。また、周波数の選択に加えまして、コイルに流す電流の出力などの条件を変更することにより、さらに細やかな硬化層の調整が可能になります。
周波数別硬化層深さ